二話(6)

「……」
 ひくりと、頬が引きつった。
 おそるおそる見上げると――もうターバンを外したその顔は、やはり例の番人と同じ顔。
「なっ……なんで……」
 いつのまに、家の中まで入ってきたのだろう?
「なんで?」
 男はくつくつと喉の奥で笑い、身を屈めてライラの目を覗き込んだ。この声、この笑い方、間違いない。
「――へぇ、なかなか美しい瞳をしてたんだな。ペリドットの色だ」
「ペリドット……」
 黄色がかった淡い緑の、確かにそういう宝石があるが、この状況とペリドットに、何か関係があっただろうか?
「なんだ? 俺と再会できて、感激のあまり言葉にならないか?」
「……か、感激?」
 ものすごく場違いな言葉のような気がするのに、混乱した頭では、うまく言い返せない。とりあえず、誰か助けてほしい。
 半泣きで後ずさりしていると、マルジャーナとサミクが追いついてきた。
「ライラ様――」
「あっ、マルジャーナ、助けて!」
「何です?」
「あれ、あなたは……」
 マルジャーナは素早くライラを後ろにかばい、きっと男を睨む。
 そこにライラの父ハウマーンが、奥から歩いてきた。
「王子、そこにおいででしたか」
「何が王子……え?」
 ライラはマルジャーナの背後から、そっと顔を出し、父と男を見比べる。
「王子?」
 男が、にやりと笑う。
「いかにも、俺はサーヒル国第十八王子、シャルディーンだ。――三日ぶりだな、ライラ」
「……」
 腰が抜けて、ライラはしばらく、そこから立てなかった。