三話(1)
カミ・ザオネイルが潜伏する商人の別荘は、とある高原の温泉地に存在しているらしい。 その別荘へと続く色深い緑の木々に囲まれた山道を、アイリスはお忍び用の小さな馬車でひっそりと進んでいた。 「館の主人は本宅にいるけれど話は通しておいたから、君は何不自由なく過ごせるはずだ」 カーテンの隙間からぼんやりと外の様子を眺める彼女は、先ほどから隣のレジーが発している事務的な声をこれまたぼんやりと聞き流して...
くわしくはこちら »三話(2)
豊かな森林に囲まれたその高原にはいくつかの温泉が湧き出ていて、ランズーカ民衆の間では人気観光スポットになっているらしい。問題の商人の別荘は、宿泊施設や土産物屋がひしめき合う小さな街を見下ろす小高い丘の上に建っていた。 「ザオネイル様は先日、当家の主人が長年胸で暖めてきた願いを叶えてくださったのです」 館の奥へと案内しながら使用人は、アイリスの求めに応じて、ザオネイルをこの別荘に迎えることとなっ...
くわしくはこちら »三話(3)
「いるんでしょうザオネイル! 出てきなさいよ、お望み通り来てやったわよ!」 憤りが込められた彼女の呼吸だけが室内に響き渡り、しばし室内の静けさを強調した。 ――ややあって、向かって右側の紗幕がもそもそっと揺れたかと思うと、その陰からランズーカの伝統的な柄の織物に包まれた物体がもぞもぞっと這い出てくる。 「……なんだ、風呂の用意ができたのか?」 咄嗟に身構えたアイリスの見守る中、鼻にかかった眠...
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