『三国志演義』に見る実際の歴史を物語に活かす方法

2006年6月27日(火) 21:42

<海外ファンタジーから学ぶ>

 日本で一番親しまれている物語の一つ、と言っても過言ではない中国の古典、それが『三国志』だ。正確なタイトルを『三国志演義』というこの物語は、日本では様々なメディアで紹介されているので触れたことのある人も多いだろうし、名前だけならほとんどの人が知っているのではないだろうか。これは中国の後漢末期から三国鼎立の時代までの史実を元に、民間伝承として語られていた様々な伝説を加えて綴った物語である。そう、この物語のポイントは、中国の史実がに元になっているということにあるのだ。実際に古代中国で三国の一つ「蜀」を打ち立てた劉備を主人公に、彼の人間的な魅力を慕って集ってくる英雄豪傑たちの活躍を描いた点が、『三国志』が海を越えた日本でも未だに愛読されている理由だと思う。日本でいうところの戦国時代のように幾多の英雄豪傑が暴れ回った時代を、ただ歴史をなぞるのではなく、それを踏まえながら人物の魅力を最大限に発揮するように、物語として書き換えてしまったのである。
 ファンタジーを書こうと考えた時に、物語の架空性を強調するのではなく、たとえば歴史小説に近いような、実際の歴史に準じた作品を書きたい、と思う方もいるかもしれない。その時にはぜひ『三国志』を思い出してほしい。書くべきものはあくまで歴史ではなく物語であって、実際に起こった出来事にとらわれすぎることなく、物語として読んだ読者がワクワクドキドキするようなものを作ってほしいのだ。その際に一番気をつけることは、いかに人物を魅力的に設定し、描くかということである。
 余談ではあるが、実際の劉備はかなりの野心家だった、と言われている。『三国志演義』の中では、彼の人間的魅力は「人徳」だとしているが、どうも野心家ながら才能的な面では抜けたところもある、彼を放っておけないという形の(現代の言葉で言うなら母性本能だろうか?)「徳」を持っていたという説もある。そして、実際にこの説にのっとって書かれた日本版の『三国志』もあったりするわけで、たとえば歴史上の人物を調べて自分なりの魅力を発見し、それを物語にしてしまう、というのも面白い創作法ではないだろうか。