◆第二章 ご主人様との日々(1)◆
1 これまでどんな使用人も三日も経たずに逃げ出したという、悪魔の屋敷において。 パミーナは、着々と勤務記録を更新していた。 生来働き者な彼女は、初日以降も悪魔の屋敷を念入りに磨き上げる。 その念入りな掃除の成果は如実に表れ、勤務三日目には悪魔の屋敷もかつての偉容を取り戻し、貴族の別邸に相応しい重厚かつ上品な屋敷へと生まれ変わっていた。 庭はまだ荒れ放題だし、棚に並んだ標本類や箱...
くわしくはこちら »◆第二章 ご主人様との日々(2)◆
余裕の笑みを浮かべて食堂に現れたクルトは、案の定パミーナの出した朝食を見て眉根を寄せる。しかし、すぐに嫌味な目で後ろに控えたパミーナをちらりと見て、聞いてきた。 「まさか、頼んでおいた仕事が間に合わなかったから、料理でご機嫌をとるつもりか?」 「いいえ、そんなつもりは全く。それに、ご依頼の品はもうできていますから」 にっこりと微笑んで、パミーナは密かに運んできておいた紙の束を、そっと食事の邪魔...
くわしくはこちら »◆第二章 ご主人様との日々(3)◆
その一言が、クルトのプライドを逆なでしたらしい。 「馬鹿にするな。植物の管理など、私にとっては生物の分類をそらんじるより容易い!」 そう言ったクルトが、パミーナのすぐ後ろに置いてあった大物用のシャベルをさっと取り上げて、近くの地面を掘り出す。 しかしどうも手つきが危なっかしくて、シャベルの先が狙った場所に下りない。 「クルト様、今自分でマンドレイクを潰しかけましたね?」 「たまたまだ」 「あ...
くわしくはこちら »◆第二章 ご主人様との日々(4)◆
2 パミーナの勤務記録が、もうすぐ一か月を迎えようとしていたある日。 悪魔の屋敷に、洒落た青の三つぞろいを着たアロイスが、ふらりとたずねてきた。 「パミーナ、この屋敷の変わりようは一体どんな魔法を使ったんだい?」 玄関先で出迎えたパミーナにそう言うや、きょろきょろと忙しなく顔を動かして、屋敷の中を見回すアロイスの顔には、驚きと感嘆の色が浮かんでいる。 「半月以上辞めなかったのもすごい...
くわしくはこちら »◆第二章 ご主人様との日々(5)◆
目の前に座った兄をにらみ、クルトはうなるような声で言う。 「勝手に人の屋敷に入り込んで使用人と雑談しているとは、良い趣味だなアロイス」 「やだな、そんなに褒めないでよ」 「褒めてない。皮肉だ」 つかみ所のない笑みを浮かべたアロイスに苛立ち、クルトは机を指でしきりに叩いた。 「なにをしに来たんだ?」 「どうしているか、ちょっと気になって。最近忙しくて来れなかっただろう。パミーナの働きぶりも見てお...
くわしくはこちら »◆第二章 ご主人様との日々(6)◆
3 翌朝。 クルトは昨日一晩練り上げた作戦を、早速実行に移すことに決め、食堂に向かった。 すっかり清潔かつ落ち着いた雰囲気になった食堂の大きな机は、白いテーブルクロスと、香りの少ない小ぶりな花で爽やかに彩られている。 クルトの座る定位置には、すでに磨き抜かれた食器が置かれていた。 椅子を引いて腰を下ろすと同時に、廊下からぱたぱたと軽やかな足音が聞こえてくる。 「おはようござ...
くわしくはこちら »◆第二章 ご主人様との日々(7)◆
「眉間にいつもしわを寄せ、口を開けば悪態をつき、人のことをおまえとか貧乏人とか腹の立つ呼び方しかしない、いつも人を見下して、笑みといえば嘲笑しか浮かべてこなかったあのクルト様が、私の名前を呼んで挨拶して、穏やかに微笑んでお礼まで言うなんて、悪い病気にかかったとしか思えません!」 どこまでも真剣な顔でとんでもない悪口を言われて、クルトは表情をなくし黙り込んだ。 おまえは私をどんな人間だと思ってい...
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