三話 (1)
「……ひさしぶりだな、愛鈴」 「はい……」 憶えていてくれた。名前までも。 もう一度会えたら話したいことはたくさんあったはずなのに、何ひとつ言葉にはならず、愛鈴は、ただ慧俊を見上げていた。 「もう、三年経つか」 「……はい」 「元気だったか?」 「は……はいっ」 「そうか」 慧俊は、先ほどまでの物憂い顔が嘘のように、穏やかな笑顔を見せている。愛鈴も、ほっと唇をほころばせた。 ――また、歓声...
くわしくはこちら »三話 (2)
愛鈴はびっくりして振り向き、引き止めた慧俊も驚いたように、すぐに手を離した。 「……」 「いや……すまない」 「……はい」 「明日の夜は……」 「は、い?」 「……確か、満月だ」 愛鈴は、大きな目をさらに見開いて、慧俊を見た。 慧俊は、いつか梅の枝を差し出したときのような表情で、愛鈴を見つめている。 満月。 ……明日の夜は、満月。 「は――はい……っ」 愛鈴はしっかりと頷いて、二歩、後...
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