四話 (1)
……夢じゃ、なかった。 慧俊は忘れていなかった。三年前のあの夜のことは、愛鈴だけの思い出ではなかったのだ。 同じ衣装の二十人の中から見つけてくれて、ずっと見ていてくれた。 舞のあいだにも何度か目が合って、愛鈴しか見ていなかったという慧俊の言葉が、偽りでなかったのもわかった。 ……それに、明日の夜、って……。 確かに明日の夜は満月のはずだった。慧俊の言わんとしていたことは、愛鈴にも察しはつ...
くわしくはこちら »四話 (2)
「それはともかく、どうして珠燕さんか玉麗さんが、太子殿下に気に入られたなんて思ったの」 愛鈴はおとなしく茶を飲みながら、動揺するまいと努めていた。慧俊が宮妓を見初めたとは――聞き流せる話ではない。 「だからー、あの宴嫌いの太子様が、よ? 舞のときだけ、熱心に御覧になってたのよ」 「そうそう! だって歌も曲芸も、難しーい顔して見てたのに、舞だけ、こう、ちょっと乗り出した感じでね……」 妙英が卓に...
くわしくはこちら »四話 (3)
……慧俊様には見つけていただきましたけどっ。 よもや自分が慧俊から梅の枝など貰ったことがあるとは思うまいと、喉元まで出かかったが、愛鈴はぐっと言葉を飲み込んだ。 大切な、大切な思い出なのだ。この程度のことで、口にしていいことではない。 ……それに。 慧俊の目に留まった――といっても、見初められたとか、そんな意味であるはずはないと、愛鈴は思っていた。 売られてきた身だということは、最...
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