九話 (1)
「今日――」 愛鈴が慧俊の前に、そっと二杯目の茶を置いた。 「わたしたちに、昇貴親王殿下の宴に出るようにとお達しがありましたが、慧俊様もいらっしゃるんですか?」 「昇貴の? いいや。私は出ないよ」 慧俊は茶の香りに目を細め、ゆっくりとひと口含む。 「……昇貴の、というなら、昇貴が主催なのだろう。私は昇貴の宴に呼ばれたことはないし、そもそも昇貴が、いつ私的な宴を開いているかも知らない」 「そう…...
くわしくはこちら »九話 (2)
……よく、わからない。 わからない、けれど。 「慧俊様の……仰るとおりに、します」 愛鈴はあえて、笑顔でそう応えた。 「だいじょうぶです。わたし、宴に出ても、隅のほうにいるだけですから。何も言いませんし、誰もわたしに、気づいたりしません」 「……」 慧俊が、ようやく表情を少し和らげ、愛鈴の手を放した。 「すまない。痛かったか」 「いいえ……」 「脅かすようなことを言ってしまったが、何もなけれ...
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