十一話 (1)

夜更けから、雨になった。  昇貴の宴で騒ぎ疲れた宮妓たちは、宿舎に帰ると、皆すぐに各々の部屋で眠りについていった。  ただ愛鈴だけが、起きていた。  窓辺にもたれ、霧のように降る雨の、ささやきに似た微かな音を聴いている。  やがて愛鈴は部屋から出ると、しんとした宿舎を抜け、もう闇夜にも迷うことなく歩けるようになった道を進んだ。  いつもより遅いころで、番兵の姿もない。  門をくぐって庭に入ると、向...

くわしくはこちら… »

十一話 (2)

慧俊なら、きっと変えてくれると信じられた。 豊作の年にも不作の年にも、わずかの蓄えすらむしり取られ、米櫃の底に残った雑穀のかけらさえ拾い集めて食いつなぎ、それでもどうにもならなくて、一人、また一人とその身を売る。――そんな都の外の世界を。  人の上に立つ者は、常に自分は人の最も下にいるのだということを、忘れてはいけない。慧俊は、そう言った。 同じことを、あの昇貴は言えるだろうか? 「……大丈夫だ、...

くわしくはこちら… »

十一話 (3)

「……慧俊、様」 「ん?」 「あの、わたし、帰ります、から……」 「上がっていかないのか」 「お部屋が、汚れます。あの、服、濡れてますし」  鼓動が早い。体の中から燃えてしまいそうだ。 とにかく離れなければ、本当に気を失いかねない。 「私の部屋なんだから、構わないが」 「……もう、遅いですから」 「遅い……といえば遅いが……」  珍しく慧俊は少し拗ねたような表情を見せたが、愛鈴は首を横に振った。 ...

くわしくはこちら… »