十七話 (1)

「別に、人の好みなんてそれぞれじゃない」 「わかってるもん」 「まさか帝になる人は、万人に好かれなきゃいけないってこともないでしょうし」 「わかってるもんっ」 「……だったら、八つ当たりで薪割りするのはやめない?」  愛鈴は新しい薪に鉈を食い込ませて、鉈の柄を掴み直すと思いきり振り上げ、切り株に薪を叩きつけた。小気味良い音とともに、薪は真っ二つになる。 「八つ当たりじゃないもん。これもわたしの仕事...

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十七話 (2)

「愛鈴、行くなら早くしなさいよ。顔だけ見たら、すぐ戻るのよ」 「あ、うん」  愛鈴は庭師の手伝いに見えるよう籠を背負い、伊福についていく。普段はゆったり歩く伊福は、実は年齢のわりに健脚のようで、まだ明るいうちに、清和殿へと着くことができた。  使用人しか通らないという小さな門から庭に入り、枯葉を拾ったり雑草を抜いたりしながら、建物に近づいていく。 「……」  伊福が微かに顎を向け、愛鈴に合図した。...

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十七話 (3)

 伊福はしっかりと頷き、愛鈴の腕を引きながら建物の横にまわり、さっきとは別の門から外に出た。 「……」 「しっかりなさい、お嬢さん。まだ間に合う」 「毒……」 「そうだ。おそらく」  寒いわけでもないのに全身が震え、歯がかちかちと鳴っていた。  ……嘘。  酷い。 「と……止めなきゃ……」 「そうだ。おそらくこれから、東和殿にお食事が運ばれるはずだ」 「けい、慧俊様は……」 「いつも日暮れまでお仕...

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