十八話 (1)

 愛鈴から顛末を聞いた佳葉は、額を押さえて、ぐったりとうなだれた。 「……無茶するわ」 「でも、これで慧俊様が危ないもの食べなくて済んだし。後は伊福さんが知らせてくれるっていうし」  あの後、宿舎に戻ると、箒一本で大鼠を退治した愛鈴を見る妓女たちの目は、何となく恐ろしいものでも見るようで、おかげで湯浴みも着替えもゆっくりでき、夕食の後にやれ茶を淹れろ、甘いものを持ってこいと言われることもなかった。...

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十八話 (2)

 雲間から月が見えては隠れ、また風に雲が流されて現れる。  教坊の宿舎を少し離れたところで、愛鈴と佳葉は、揃って足を止めた。――前方に、揺れる炎が見えた。 「……佳葉ちゃん」 「松明ね」  しかも火は、二つ見えた。二人以上いる、ということになる。 「いつも、火を持った人がいるの?」 「いないよ。こんなの初めて」 「……あれが味方ならいいけどね」  昇貴の暗殺を警戒した慧俊の番兵か、慧俊を見張る昇貴...

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十八話 (3)

……慧俊様。  ひと目でいい。無事な姿を、見たかった。  でも。 「……わたし、行ったらいけなかったんだね」 「愛鈴――」  もし、さっきの昇貴の私兵に捕まって、毒殺の邪魔をしたのが自分だと知れれば、ただでは済まなかっただろう。たかが宮妓の一人など、その場で首を刎ねられていたかもしれない。  ……そうしたら、きっと、慧俊様が気になさる。  たかが宮妓の一人にさえ、こんなにやさしいのだ。心を痛めるに...

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