二十六話(1)
帝の居住する春鶯宮は、宮殿の奥にある。 広大な庭と建物は、病床の主を気遣うかのように静けさをたたえ、宵闇の中に沈んでいたが、その内でただ一室、満々と灯りの点された部屋があった。 十数人の貴族らのあいだを、侍女が酒を注いでまわり、楽師と妓女、曲芸師らが、宴の始まりを待っている。 正面に、空席が四つ。 愛鈴は隅に控えながら、その誰もいない席を、じっと見つめていた。 ときおり前にいる珠燕や玉麗...
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「では、どうぞ帝、お楽しみください――」 始まった楽の音と歓声が、細い視線の糸を断つ。 愛鈴は佳葉に袖を引かれて、そっと後ろに下がった。 歌、舞、曲芸。次々繰り広げられる演目を、慧俊は酒を飲みながら見てはいたが、それでもしばしば、愛鈴に目線を送る。 愛鈴も顔は演者のほうに向けながら、目だけは慧俊を追っていた。 明艶の舞が終わったところで、佳葉が愛鈴の袖を引いた。愛鈴は一度だけ、佳葉を振り...
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