三十五話(1)
普段は帝が臣下と評議を行うのに使われる、旭日殿の広間では、朝早くから召集された貴族、官吏たちが、ざわめいていた。 帝崩御の報は、すでに周知されている。だが、その亡き帝が、慧俊太子ではなく、弟の昇貴親王に位を譲るとの勅書を残したことに、多くの臣下は半信半疑だった。 まさかとやはりの声が混じる中で、合図の銅鑼が鳴り響く。 広間が、静まり返った。 やがて大勢の貴族官吏の前に、昇貴が母親の陳妃を...
くわしくはこちら »三十五話(2)
「……そりゃ、偽物だ」 「なっ……」 「まずいですねぇ。勅書の偽造は大罪ですよ。――そうでしょう、慧俊太子殿下!」 慈雲がくるりと後ろを向き、怒鳴った。 全員が、一斉にそちらを見る。 広間の隅の柱にもたれて、背の高い青年が立っていた。 青年は驚きに声を失う官吏らのほうへ、ゆっくりと歩いていく。 「――道を開けよ」 静かなひと言で官吏らは後ずさり、人を割って、玉座へと一本の道が開けた。 ...
くわしくはこちら »三十五話(3)
「―――――……」 絶叫。 昇貴が剣を振りかざし、走ってくる。 愛鈴はとっさに慧俊の前に飛び出そうとして、しかし、慧俊に背後へと押し戻された。 昇貴と慧俊のあいだに、慈雲と数人の官吏が立ちはだかる。 佳葉が、慈雲の名を叫んだ。 鞘に収めたままの剣で、慈雲は昇貴の剣を叩き落し、同じく剣の鞘で、官吏らが昇貴を突き倒す。 「縄を」 慈雲の声で広間の扉が一斉に開き、番兵がなだれ込んできた...
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