一話(1)
雷鳴が轟き、稲光がその姿を浮かび上がらせた。 叩きつけるような激しい雨音さえ掻き消すように、女たちの絶叫が響き渡る。 鬼が、という誰かの声を遮って、青白い閃光が再び異形の者を照らした。 逆立った髪、おそろしく大きな目鼻、剥き出された歯――それは怒りの形相に似て、だが、とても人の顔とは思われなかった。誰かが言った鬼という呼び名が、この異形の者には、最も合っているのではないだろうか。 「鬼が……...
くわしくはこちら »一話(2)
「――艶子、艶子ーっ!」 裏返った男の叫び声に、詞子たち三人は思わず顔を見合わせ、また様子を窺うと、この家の主――中納言藤原国友が、両手足をばたつかせ、全身で慌てながら娘の名をひたすら連呼していた。 「まぁ、お父様ったら、あんなに取り乱して……」 「しかも鬼の前で何度も名を呼んでますよ。迂闊ですね」 「こんなときこそ殿が落ち着いてくださらないと、皆がどうすればよいのか……」 そう言っている間に...
くわしくはこちら »一話(3)
詞子は戸口の際まで出て、矢先を異形の者へと向ける。二人がかりでも、しょせんは女の細腕、長くは構えていられない。詞子は葛葉とともに弦を思いきり引っぱり、叫んだ。 「――止まりなさい!」 雷鳴の中、凛と響いた声に、鬼が振り返る。 「いい? 一、二……」 矢から手を離した刹那、轟音とともに青白い閃光が走った。 「……どこかに当たったのかしら?」 「ここからではよく見えませんね」 「あちらの格子を上...
くわしくはこちら »一話(4)
「あの鬼は、あなたを捜していたようだったわ。あなたに心当たりはないの?」 「あるわけないでしょ!? 何よ、自分で呼んでおいて、白々しい!」 雷鳴が轟き、稲光がその姿を浮かび上がらせる。 さっきの鬼にも似た、憤怒の形相。 「出てってよ」 言葉が目に見えるものならば、きっと薔薇のように棘のある声色。 「出てって、鬼姫。あんたがいるから、こんな恐ろしい目に遭うのよ。――早く、いますぐここから出てっ...
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