二話(1)

「白河の鬼姫?」  口に運びかけていた酒の杯を持ったまま、雅遠は集まった友人たちを見た。 「聞いたことないか、雅遠」 「ない」  都は四条――太政大臣不在のいま、人臣のうちで右大臣と並ぶ最高位である左大臣、源雅兼の邸宅は南北二町を占め、庶民の家ならゆうに何百軒と納まるほどの広大な敷地に、主の住まう寝殿と、その子供らが使う東西北の対の屋があり、それぞれに数多の雑色、女房たちが仕えている。  如月の吉...

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二話(2)

 敦時は少し驚いたように、目を見張った。 「……私が手を出していない女人を捜そうとしたら、とうとう鬼姫にまで行き着いたということかな?」 「何です兵部卿宮、まさか鬼までも恋人にしていたのですか」 「いや、さすがの私も、あのような話を耳にしては、口説こうとは思えなかったな」 「あのようなって……」  身を乗り出してきた公達に、敦時は苦笑して杯を傾ける。 「二条中納言の中の君が美女だと聞いて、それなら...

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二話(3)

「そこで空腹に負けるところが無風流だよ」  白瑠璃の器に盛られた苺を頬張りながら、雅遠は敦時を横目で睨んだ。 「宮まで父みたいなこと言わないでくださいよ。腹が減ったら食う。それでいいでしょう」 「きみの父上の嘆きがよくわかるから言うのだよ。……ところで、前の但馬守の娘とは、あれからどうなった?」 「とっくに終わってますよ。いまは安芸守の娘のところに通ってます、一応」  敦時は嘆息をもらし、広げた扇...

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