三話(1)
鴨川を渡った都の東、北白河にある二条中納言の別邸は、山に近く人里からも離れ、静寂に包まれていた。 「のんびりできてよかったじゃない。――ね、淡路、葛葉」 廂に出て、御簾越しに庭を眺めていた詞子が振り向くと、二人の女房は、それぞれ曖昧な笑みと不機嫌そうな表情を浮かべた。 「ええ、まぁ……姫様がそう仰いますなら……ですが……」 「確かにここは落ち着いたいい所ですし、余計なことを言う者もいませんけど...
くわしくはこちら »三話(2)
ぶち猫のほうが頭を上げ、うー、と猫らしからぬ声で唸る。 「玻璃?」 詞子が呼びかけると、白黒のぶち猫は返事をするように尻尾を動かしたが、すぐにまた丸くなって眠ってしまった。 小さく笑って、詞子はまた、辺りを見まわす。 少しの調度しかない、がらんとした薄暗い部屋と、御簾に隔てられた、小さな花々の咲き乱れる明るい庭。その光景は、二条の本邸とそれほど違いはない。 ただ、目を閉じると、木々の枝葉...
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