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      <title>小学館：ルルル文庫／WEB小説_桜嵐恋絵巻</title>
      <link>http://lu3.gagaga-lululu.jp/ouran/</link>
      <description>ルルル文庫WEB小説</description>
      <language>ja</language>
      <copyright>Copyright 2011</copyright>
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            <item>
         <title>一話（２）</title>
         <description>「――艶子、艶子ーっ！」
　裏返った男の叫び声に、詞子たち三人は思わず顔を見合わせ、また様子を窺うと、この家の主――中納言藤原国友が、両手足をばたつかせ、全身で慌てながら娘の名をひたすら連呼していた。
「まぁ、お父様ったら、あんなに取り乱して……」
「しかも鬼の前で何度も名を呼んでますよ。迂闊ですね」
「こんなときこそ殿が落ち着いてくださらないと、皆がどうすればよいのか……」
　そう言っている間にも、鬼は暴れる艶子を引きずって、外に出ようとしている。
「つ、艶子、艶子！　――おい、誰か早く艶子を助けないか！」
　主の命令で、家人たちがそれぞれ鞘から抜いた剣を構え、弓に矢を番えるものの、どの男も腰が引け、威嚇のために発する声にも勢いはなく、鬼を恐れているのは明らかだった。
「いやーっ！　お父様っ、お母様ーっ！　誰かっ……命婦、伊勢！　あ、初雁っ、誰か……早く助けなさいよーっ！」
　名指しされた女房らは、とっくに気絶しているのか腰が抜けているのか返事すらせず、父親も相変わらず慌てているだけで、母親など姿すら見えない。
　とうとう鬼は、艶子を連れて簀子へと出てしまった。雨が容赦なく叩きつけ、艶子は叫ぶことすらできなくなる。
　詞子は、ゆっくりと立ち上がった。
「姫様」
　葛葉が、咎めるような口調で詞子を呼ぶ。
「いくら殿も男衆も腰抜けとはいえ、姫様がどうこうなさろうだなんて無茶ですよ」
「でも、ここで腰が抜けていないのは、わたくしだけだわ」
「おやめなさいませ。あの我儘な妹君のために、姫様がそこまでされることはありません」
「そ、そうですよ！　相手は得体の知れないものですよ!?」
　必死に袖を引く淡路を、詞子は雷鳴と絶叫の中にあって、かえって奇妙なほど落ち着き払って見下ろしていた。
「……艶子が助けてと望むなら、助けるしかないでしょう？」
「姫様……」
「それが、わたくしに与えられた天命だもの」
充分な明かりがあれば、その暗い瞳が見えただろうか――
　小袿の襟元を直し、詞子は柱の陰から出ると、一番近くにいた家人に手を伸ばした。
「その弓と矢を、わたくしにお貸しなさい」
「は……へっ？」
　若い家人が目を瞬かせているうちに、詞子はさっさとその手から、弓と矢を一本奪い取る。それを見て、ため息をついて淡路と葛葉も立ち上がった。
「姫様、弓矢をお使いになったことなどございませんでしょう……」
「ないわ。力が要りそうね」
「お手伝いします」
　淡路に袖を押さえさせ、詞子は弓の握りを掴み、矢を番えた。葛葉が矢を引くのを助ける。
「こ――詞子!?　何をする!?」
　雨降る外に向かって弓矢を構える詞子を見て、国友が脳天から突き抜けたような声でわめきながら、あたふたと駆け寄ってきた。
「このままでは、艶子が連れていかれますわ」
「だ、だが、おまえ、もし艶子に当たったりしたら……」
「当たらないようにお祈りなさいませ」
　淡々と言って、詞子は葛葉に頷く。
「見える？」
「雷が光れば、どうにか」
「合図をしたら、手を離して」
　稲光の間に見えた鬼は、もはや抗う力を失った艶子を脇に抱えて庭に下り、門へと向かおうとしていたが、艶子の衣や長い髪が雨に濡れて重くなっているのだろう、運ぶのに苦労しているようで、動きは鈍かった。
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         <category>001一話</category>
         <pubDate>Tue, 29 Jul 2008 00:00:55 +0900</pubDate>
      </item>
            <item>
         <title>一話（３）</title>
         <description>　詞子は戸口の際まで出て、矢先を異形の者へと向ける。二人がかりでも、しょせんは女の細腕、長くは構えていられない。詞子は葛葉とともに弦を思いきり引っぱり、叫んだ。
「――止まりなさい！」
　雷鳴の中、凛と響いた声に、鬼が振り返る。
「いい？　一、二……」
　矢から手を離した刹那、轟音とともに青白い閃光が走った。
「……どこかに当たったのかしら？」
「ここからではよく見えませんね」
「あちらの格子を上げれば、見えるかもしれません」
　呆然と立ちつくしている父親を押しのけ、気絶している女房たちを踏み越えて、淡路が持ってきた燭台の灯りを頼りに、詞子らは鬼のいた辺りの庭に面した格子戸を上げた。
　鬼は艶子に覆い被さるようにして倒れていた。矢がどこに刺さっているのかは見えないが、よろめきながら立ち上がった鬼は、左脚を押さえている。
「いまのうちに、誰かあの子を連れ戻しなさい」
　詞子の言葉に、凍りついたように動かなかった家人たちが我に返り、妻戸を開けて次々と外に出ていく。それを見て、鬼は一瞬迷ったようだったが、艶子をその場に残して踵を返すと、足を引きずりながら門のほうへと走り去った。
「……」
　詞子は、鬼の姿が消えた闇を、じっと見つめていた。
　家人たちに担がれて、全身ずぶ濡れで泥まみれになった艶子が部屋に運び込まれてくると、女房らが気まずそうに顔を見合わせながらも、ほっとした様子で隠れていた几帳の陰から姿を見せる。
「ああ、恐ろしかった……。何だったのでしょう、あれは」
「きっと鬼ですわ。こんなひどい雷雨の夜ですもの。鬼が山から下りてきたのでしょう」
「まあまあ……姫様、御髪を拭きませんと。男たちはお下がりなさい。ああ、こんなに汚れてしまって……姫様があまりにお美しいから、鬼も魅入られてしまったのですわ」
「……によ……」
　艶子が、ゆっくりと顔を上げた。濡れた髪が頬に張りついている。
「何よ――何よ何よっ！　誰もあたくしを助けないで……！」
「で、ですが姫様、相手が鬼では……」
「そっ、そうですわ！　男衆がだらしないんですのよっ」
　口々に言い訳を始めた女房たちを、艶子はきっと睨みつけた。
「何よ！　鬼ぐらい、うちにだっているじゃないの！」
　皆が一斉に、詞子を振り向いた。
　詞子は黙って、まだ弓を手にしたまま立っている。
「……あんたね？」
　雷鳴よりも低く、艶子がつぶやいた。
「鬼姫。……あんたが仲間を呼んだんでしょう」
「……わたくしが？」
「そうなのね。そうなんだわ。そうでなきゃ、あんなものがうちに入ってくるなんて……！」
　艶子のきつい口調に、女房たちも非難めいたどよめきを上げる。その様子に、詞子の背後で葛葉が呆れた顔をした。
「助けてもらっておいてよく言いますね。大方ここの誰かが見境なく色目を使って、鬼や物の怪の類いまで呼び込んでるんじゃないですか」
「何ですって!?」
「……ああ葛葉、また余計なことを……」
　ますます大きくなった抗議の声に、淡路が頭を抱える。
「艶子」
　罵倒に近い女房たちの言葉を黙って聞いていた詞子が、目を吊り上げている妹を、静かに見つめ返した。
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         <category>001一話</category>
         <pubDate>Thu, 31 Jul 2008 00:10:17 +0900</pubDate>
      </item>
            <item>
         <title>一話（４）</title>
         <description>「あの鬼は、あなたを捜していたようだったわ。あなたに心当たりはないの？」
「あるわけないでしょ!?　何よ、自分で呼んでおいて、白々しい！」
　雷鳴が轟き、稲光がその姿を浮かび上がらせる。
　さっきの鬼にも似た、憤怒の形相。
「出てってよ」
　言葉が目に見えるものならば、きっと薔薇のように棘のある声色。
「出てって、鬼姫。あんたがいるから、こんな恐ろしい目に遭うのよ。――早く、いますぐここから出てって!!」
　人の声と雷鳴が途切れただけで、ずいぶんと静かになる。
　雨音だけが聞こえていた。
　詞子は一度目を閉じ、そして目を開け、唇に冷めた笑みを浮かべて、まだぼんやりと突っ立っている父親を振り返る。その冷笑の中に、諦めの影が差していたことに気づいた者は、誰一人いない。
「北白河の家が、空いていますわね」
「あ……ああ……」
「夜が明けたら、まいります」
　弓を父親に押しつけ、詞子は開いた格子から真っ暗な空を見上げた。
「……夜明けには、この雨も止むでしょう」
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         <category>001一話</category>
         <pubDate>Tue, 05 Aug 2008 00:00:14 +0900</pubDate>
      </item>
            <item>
         <title>二話（１）</title>
         <description>「白河の鬼姫？」
　口に運びかけていた酒の杯を持ったまま、雅遠は集まった友人たちを見た。
「聞いたことないか、雅遠」
「ない」
　都は四条――太政大臣不在のいま、人臣のうちで右大臣と並ぶ最高位である左大臣、源雅兼の邸宅は南北二町を占め、庶民の家ならゆうに何百軒と納まるほどの広大な敷地に、主の住まう寝殿と、その子供らが使う東西北の対の屋があり、それぞれに数多の雑色、女房たちが仕えている。
　如月の吉日、この四条の邸宅では、花見の宴が催されていた。
　朧月の下、庭には篝火が焚かれ、いまが盛りの桜の花を照らしている。招かれた人々は、池に浮かぶ舟から聴こえる管弦の音に耳を傾けながら、酒を酌み交わし、あるいは歌を口ずさみ、またこの家の女房に戯れに声をかけたりしながら、それぞれに楽しんでおり、そんな中、寝殿南側の広廂では、雅兼の息子である雅遠を、数人の年若い公達が囲んでいた。
「鬼姫って何なんだ。鬼の娘か？」
「中納言の娘が、そう呼ばれてるんだよ」
　雅遠は杯をひと息にあおり、その甘みに顔をしかめ、茄子の漬物に手を伸ばす。
「そう言ってもな、中納言はいま四人いるだろう。どの中納言なんだ」
「二条中納言だ。ほら、藤原の」
　友人たちの苦笑交じりの表情を見て、雅遠も頷いた。
「ああ、あの右大臣の気に入りで、最近やけに出世の早い……」
「それだ、それ。そこの娘のことだよ」
「ふーん……。二条中納言には、そんなに恐ろしい娘がいるのか」
雅遠は笙や笛の音をまるで気にする様子もなく、こりこり音を立てて茄子を噛んでいる。
「二条中納言には娘が三人いる。聞いた話では、中の君はかなりの美人らしい。三の君は、まだ裳着の済んでいない子供らしいから、どうなのか知らないが……」
「ということは、一番上の娘が鬼なのか」
「しかし、二条中納言の大君の噂など、女の話に疎い雅遠はともかく、我々ですら、聞いたことがなかったではないか。急に話題が出てくるとは、どういうことなのだ？」
　一人の言葉に、いま女の話に疎いと言われたばかりの雅遠以外の公達は、一斉に頷いた。
「確かに。中の君の話ならよく聞くぞ。十五だったか、年のわりに色気のある美人だと」
「あそこの女房たちは、大君のことをまったく話さないらしいが」
「女のことなら――あの御方に訊くのがいいのではないか？」
　今度は焼いた貝をつついていた雅遠に、皆の目が集まる。
「……兵部卿宮なら、あっちの女房たちのところで飲んでるんじゃないのか」
「やっぱり……」
「どこでもここでも女を独り占めするんだな、あの御方は……」
　額を押さえてうなだれる友人たちの姿に、雅遠は笑って、近くに控えていた女童に、兵部卿宮を捜してくるように告げた。ほどなく、すらりとした立ち姿も美しい貴公子がやって来る。先の帝の末弟、兵部卿宮の敦時である。
「まったく、何事かな。せっかく美しい花を愛でていたというのに、こんなむさくるしいところに呼び出されるとは」
「よく言いますよ。愛でておられたのは何の花だか……」
　ぼやく友人の横の、空いている円座を指して、雅遠は敦時に座るように促した。
「呼び戻してすみませんね、宮。世の女どもを貴方に独占されて困ってる俺の友人どもが、ぜひとも宮に話をお聞きしたいって言ってるもんで」
「それは珍しい。それで、誰の話が聞きたいのかな」
「鬼姫とかいう女の」
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         <category>002二話</category>
         <pubDate>Thu, 07 Aug 2008 00:00:11 +0900</pubDate>
      </item>
            <item>
         <title>二話（２）</title>
         <description>　敦時は少し驚いたように、目を見張った。
「……私が手を出していない女人を捜そうとしたら、とうとう鬼姫にまで行き着いたということかな？」
「何です兵部卿宮、まさか鬼までも恋人にしていたのですか」
「いや、さすがの私も、あのような話を耳にしては、口説こうとは思えなかったな」
「あのようなって……」
　身を乗り出してきた公達に、敦時は苦笑して杯を傾ける。
「二条中納言の中の君が美女だと聞いて、それなら大君も美しいのではないかと、あそこの女房にそれとなく尋ねてみたのだが、何故か皆、大君のこととなると口が重くてね。それどころか、鬼姫と呼ばれているじゃないか。ますます気になって、ようやく聞き出したら……」
「聞き出したら？」
「呪われている、らしい」
「……」
　身を乗り出していた連中が、逆に身を引いて、気味悪そうに互いの顔を見合わせている。
「の、呪い、ですか？」
「話してくれた女房もずいぶん恐ろしがって、詳しくは言おうとしなかったな。ただ、大君は中の君や三の君とは、母親が違うそうだ。大君の母親は身分の低い女で、もう亡くなっているとか……。とにかく、顔立ちは中の君とはまるで似ていない、特に見るべきところもないと聞いて、文も出さずに終わってしまったよ」
　公達は各々、納得したような、がっかりしたような声を上げた。雅遠は干した鳥の肉に醤をつけては、口に運んでいる。
「呪い持ちの姫君とは、恐ろしいなぁ」
「何かに憑かれているのかも……」
「なるほど。それでいままで大君の話は聞かなかったということですか」
「美女でないとしても、年は今年で十六だというから、そのようなことでもなければ、少しぐらいは口の端に上っただろうね」
　干鳥を飲み込んだ雅遠が、酒で喉を潤し、甘いとつぶやいて顔を上げた。
「それで？　二条中納言は、二条に屋敷があるから二条中納言というんだろう？　二条の鬼姫ではなくて、どうして白河の鬼姫なんだ」
「いや、だからな、そこなんだよ。いま、その鬼姫は白河にある二条中納言の別邸に住んでいるというんだが、ここ数日、急にあちこちで白河の鬼姫鬼姫と聞くものだから、兵部卿宮なら御存知かと……」
「それで私が呼ばれたわけか」
　敦時は笑って、扇を広げて襟元を少し扇いだ。
「十日ほど前、ひどい大雨と雷の夜があっただろう。そのとき、右大臣家の女房が方違えで二条中納言の家に泊まっていたそうなのだが、夜になって、庭先に鬼が現れたとか」
「鬼!?」
　一人が杯を取り落とし、慌てて拾う。
「本当ですか、それは……」
「姿を見たと言ったよ。それは恐ろしい面相で、とても人とは思われなかったと。しかも屋敷の中にまで乗り込んできた――」
　別の一人が、ひぇっ、と声を上げ、袖で口を押さえた。
「そ、それで？」
「右大臣家の女房は、恐ろしさのあまり、気を失ってしまった。目覚めた後で聞いてみると、鬼は矢を射かけられて退散したらしいが、大君が鬼を呼び寄せたのだと大騒ぎになっていて、さすがに中納言も屋敷に置いておけないと思ったのだろう、朝早くに大君を白河の別邸に移したのだそうだ」
　その話を右大臣家の女房が吹聴して、噂が広まった――ということらしい。
「……それは……恐ろしい……」
「せっかく方違えした先でそのような目に遭うとは、まさかそれも呪いのうち……」
「ま、まさか、方違えぐらいでは避けられぬほどの呪いだと？」
「当分は白河に近寄らないほうがいいな……」
「二条中納言の大君は、鬼に憑かれた姫君であったか……」
　頬を引きつらせた面々に、敦時はくすりと笑い、閉じた扇で優雅に廂の奥を指し示した。
「まぁ、せっかくの宴の夜、きみたちもわざわざ鬼の姫君に思いをはせなくとも、この家の美しき花々を愛でてはいかがかな」
「そ……そうですね……」
「そうそう、ここの女房、いや、ここの花はなかなか美しい……」
　一人、また一人と腰を上げ、とうとう座には、雅遠と敦時だけが残された。雅遠はひたすら、瓜の漬物をこりこりと噛んでいる。
「……食べてばかりだな、きみは」
「宴の酒は甘くて好かないんですよ」
「花見の宴なのだから、花を見たらどうかという意味だが」
「うちの女房どもなんか見慣れてます」
「庭の桜だよ」
「毎年見てます」
「……相変わらず無風流だね」
「花は好きですよ。ただ、昼間蹴鞠と弓の稽古をしたら、腹が減って」
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         <category>002二話</category>
         <pubDate>Tue, 12 Aug 2008 00:00:49 +0900</pubDate>
      </item>
            <item>
         <title>二話（３）</title>
         <description>「そこで空腹に負けるところが無風流だよ」
　白瑠璃の器に盛られた苺を頬張りながら、雅遠は敦時を横目で睨んだ。
「宮まで父みたいなこと言わないでくださいよ。腹が減ったら食う。それでいいでしょう」
「きみの父上の嘆きがよくわかるから言うのだよ。……ところで、前の但馬守の娘とは、あれからどうなった？」
「とっくに終わってますよ。いまは安芸守の娘のところに通ってます、一応」
　敦時は嘆息をもらし、広げた扇で顔を覆った。
「情けない……。きみが前の但馬守の娘のところへ文を出すようになったと聞いたのは、つい二十日ほど前のことだというのに、また駄目だったのか……」
「だから父のようなことを言わんでくださいって」
「安芸守の娘にだって、通っているなどと言って、どうせ文を二、三度出している程度なのではないのか？」
「二度文を使いに持たせて、昨日の夜は自分で行きましたよ。女房に渡しただけですが」
「そこで歌の遣り取りは……」
「その場で歌を詠むなんて、俺ができるわけないでしょう」
「……ああ……」
　さらに深くため息をつく敦時の杯に、雅遠は酒を注ぎ足す。
「ま、そう悲嘆せず飲んでくださいよ。ああ、この茄子、いい加減に漬かってますよ」
「……他ならぬきみ自身の話なのだから、きみが一番悲嘆すべきなのだがね、雅遠」
「あいにく俺は、宮のように恋が上手くないんで」
　ちょうど楽が途切れて、雅遠が漬物を噛む音がこりこりこりと小気味よく響く。
「どうも、できないんですよ。顔も見たことない女に、わざわざ頭をひねって歌なんぞ詠んで、それで返事が来るならともかく、代筆代筆、また代筆で、挙句にこっちが四苦八苦して作った歌をけなされて笑われて、それでもどうにか堪えて会えるところまでこぎつけたって、簾を上げないどころか、もったいぶって話もしやしない。しかもこの期に及んで、まだ歌なんか渡してこられたら――」
「……雅遠、雅遠」
　敦時が頭を振って、雅遠の肩を扇で叩いた。
「きみが好い人物だということは、私もよく知っている。……が、きみも今年で十六だろう。もう少し大人になったほうがいい。世間並みの作法というものを身につけるとでも思って、せめて歌のひとつぐらい詠めるようにならなくては、この先やっていけないよ」
「本当にうちの父そっくりのことを言いますね、宮も」
　箸を置いて、雅遠は大きく息を吐き、高欄に背をもたれた。弱い風が、桜の枝を緩く揺らしている。
「きっと、その次はこう仰るつもりでしょう。歌も詠めない、頭も悪いで、そんなことだから弟の利雅に何事も先を越されるのだ。いくら同い年の兄弟とはいえ、おまえのほうがふた月も先に産まれているのだし、おまえの母は皇女で、利雅の母は受領の娘。血筋からも生まれ順からいっても、おまえがこの家の当主となるべきなのに、おまえはとても、いずれ大臣となれるような器ではない――」
「……私はそんなことまで言うつもりはないよ」
　困ったように苦笑して、敦時は静かに扇を開いた。扇にも、桜花の絵が描かれている。
「きみの異腹の弟は、確かに小才が利くと評判だ。出世するだろうね。しかし、きみがそれを悔しいと思えば、いつでも追い越せるだろう」
「どうでしょうね。あいつは出来がいい。俺みたいに、歌を詠もうと考えただけで、頭が石のようになることもないでしょうよ」
　そう言う雅遠の表情は、ごくあっさりとしていた。
「ま、利雅だって源氏の子です。俺には到底見込みがないと諦めているからこそ、父も利雅を跡継ぎにするつもりで、あいつを先に蔵人に推したんでしょう」
「……そこは私も、いまだに納得がいかない。きみは弟よりも器用ではないかもしれないが、間違いなく嫡子だ。十六の若さで官に就かせるならば、きみが先であるべきだね」
「宮――」
　雅遠は首をめぐらせ、東の対のほうを見た。そこの廂でも多くの貴族たちが集い、談笑しているのが遠目に窺える。この屋敷では、桜は東の対からの眺めが最も素晴らしいということで、主である雅兼に招かれた人々は、ほとんど東の対にいるのだ。
「今日は、利雅も来てるんですよ」
「どこに？」
「あちらの対の屋に。いまごろ堂々と、父の客の相手をしてるんじゃないですか」
　俺は面倒なんで会いませんけど――と言って、雅遠は唇の片端を少し歪めた。
「確かに、左大臣である父がひと声上げれば、俺が前の除目で何らかの官位を得るのは簡単だったでしょう。……父がそうしないで、利雅のほうを蔵人に就かせたのは、何故だと思いますか」
「わからないね」
「何もできない馬鹿息子を出仕させて、自分が世間の笑い者になりたくなかったからですよ」
　振り向いた敦時は、微かに眉をひそめていた。
「……まさか」
「俺だっていずれは任官されるでしょうけど、恥をかくのはできるだけ先延ばしにしたいってことでしょうね。急いで職に就かなくても、左大臣の息子なら、何もしなくても二十一になれば、最低でも五位の位が貰えるし、それに見合った給与も出ますから」
　風が、少しのあいだ強く吹き込んできた。
　雅遠は目を細めて風をやり過ごし、そうして、低くつぶやく。
「父の口から聞いたんで、本当ですよ。……教養がない俺が親の力で公卿になって、左大臣の嫡子はこの程度かと言われるよりは、源氏の家は利雅に任せて、俺はせいぜい金持ちの娘の婿になるほうが現実的かもしれない、ってね」
「……」
　敦時は何か言いかけるように口を開いたが、結局何も言わず、杯を干した。
　再び管弦の演奏が始まる。
雅遠はその音色に耳を傾けながら、ぼんやりと桜を眺め、ひとつ、あくびをした。

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         <category>002二話</category>
         <pubDate>Thu, 14 Aug 2008 00:00:02 +0900</pubDate>
      </item>
            <item>
         <title>三話（１）</title>
         <description>　鴨川を渡った都の東、北白河にある二条中納言の別邸は、山に近く人里からも離れ、静寂に包まれていた。
「のんびりできてよかったじゃない。――ね、淡路、葛葉」
　廂に出て、御簾越しに庭を眺めていた詞子が振り向くと、二人の女房は、それぞれ曖昧な笑みと不機嫌そうな表情を浮かべた。
「ええ、まぁ……姫様がそう仰いますなら……ですが……」
「確かにここは落ち着いたいい所ですし、余計なことを言う者もいませんけど、恩知らずの我儘姫に追い出されたのだと思うと、いまだに腹が立ちます」
「律儀に腹を立てることなんてないわ。あの子のああいった物言いは、いまに始まったことじゃないでしょ？」
　でも――と、詞子は眉を下げて微笑んだ。
「わたくしはここが気に入っているけれど、ふたりには退屈かもしれないわね。あなたたちはついてきてくれると思っていたから、否とも言わせず連れてきてしまって、悪かったわ」
「そ、そんなことないですっ！　ね、葛葉？」
　淡路が慌てて手を振り、横で葛葉も頷く。
「そうですよ。本邸にいてもあちらの女房どもと喧嘩するだけで、あんなものは退屈しのぎにもなりません」
「それに、ほら、瑠璃と玻璃も、あんなにのびのびとして……」
　三人が視線を向けた先には、あたたかな陽射しが降り注ぐ簀子で、腹を出して寝そべっている黒猫と、丸くなって目を細めている白毛に黒のぶち猫。
「……まぁ、ずいぶん気持ちよさそうだこと……」
「繋いでおかなくていいんですか？」
「本邸ではないもの。逃げる様子もないし、繋いでしまっては、あんなにくつろいで寝ることもできないんじゃないかしら」
　詞子は笑って、また庭に目をやった。
　夏、それもよほど暑いときでもなければ使われることのなかった白河の別邸は、屋敷を囲む築地の泥が落ち、ところどころが崩れ、簀子も傷み、庭も荒れ放題だった。
これではあんまりだと、果敢にも葛葉が国友に抗議したものの、すぐにすべてを修繕するのも難しいというので、ひとまず北の対と東の対については、使わないようにするということにして、本邸の家人を何人か寄越してもらい、普段使う寝殿だけを住めるように整えたが、家人らも数日で帰ってしまったため、その後、残った家人だけで庭を見苦しくない程度には草を刈り、池の掃除もしたら、落ち着くまで十日以上かかってしまった。
　中納言家のれっきとした姫君の住まいなのにと、葛葉どころか淡路までも怒ったことには、本邸にはかなりの人数の家人がいるのに、詞子に付けられたのは、たった三人、それも夫婦者とその息子だけで、子供はまだ七つだった。
「有輔と小鷺はすすんでこちらに来てくれたけれど、筆丸はかわいそうだったわね。まだ同じ年ごろの子たちと遊びたい盛りでしょうに……」
「筆丸も望んで来ていますよ。昨日もここの池は大きいと言って喜んで、ねぇ」
「ええ。掃除をしているのか泥遊びをしているのか、どっちかわかりませんでしたよ」
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         <category>003三話</category>
         <pubDate>Tue, 19 Aug 2008 00:00:20 +0900</pubDate>
      </item>
            <item>
         <title>三話（２）</title>
         <description>　ぶち猫のほうが頭を上げ、うー、と猫らしからぬ声で唸る。
「玻璃？」
　詞子が呼びかけると、白黒のぶち猫は返事をするように尻尾を動かしたが、すぐにまた丸くなって眠ってしまった。
　小さく笑って、詞子はまた、辺りを見まわす。
　少しの調度しかない、がらんとした薄暗い部屋と、御簾に隔てられた、小さな花々の咲き乱れる明るい庭。その光景は、二条の本邸とそれほど違いはない。
　ただ、目を閉じると、木々の枝葉が風に揺れる音が、以前のように襖越しに漏れる女たちのはしゃいだ声に邪魔されることなく、涼やかに耳に届いてくる。
　……これでよかったのよ。
　いつかは、こんな静かな暮らしを送るつもりでいた。もっともそのときには、髪を下ろし、墨染めの衣を着て、誰も連れずに独り――
「それにしても、手入れもされていなかったのに、見事に咲いていますわね」
　淡路の弾んだ声に、顔を上げる。御簾の内からでもわかる鮮やかな色に、詞子も唇をほころばせた。
「そうね。……前に見たのは、いつだったかしら」
「姫様の御母上が亡くなられる前の年の春じゃありませんか」
「そうだったわ。葛葉はよく憶えているわね」
「あのころは庭に下りて見ましたよ。御母上は東の対から御覧になられておいででした」
「向こうからのほうが、よく見えるわね」
　腰を浮かせかけた詞子を、淡路が慌てて手で制する。
「いけませんよ、姫様。東の対に行く渡殿は、床板が腐っていて通れないんです」
「あら、残念」
「有輔さんに頼んで、少しずつ直してもらいますよ。釣殿に渡る廊も傷んでましたから、そっちを先に見てもらわないと、夏に涼む場所がないです」
「それじゃ、東の対に渡れるのは、来年になるわね」
　ぶち猫の玻璃がのそりと起き上がり、前足を思いきり伸ばした。そうして御簾の隙間から表の簀子へと出ると、そのまま庭に飛び降りてしまう。
「玻璃、あまり遠くへ行っては駄目よ」
「食事の時間になったら戻ってきますよ」
　それでは――と言って、淡路と葛葉が立ち上がった。
「小鷺さんがわたしたちの単を縫ってくれていますので、ちょっと手伝ってきます」
「あたしも筆丸に頼む用事がありますから――」
「ええ。いってらっしゃい」
　淡路と葛葉が家人夫婦のいる下屋に行ってしまって、寝殿には詞子と、黒猫の瑠璃だけになった。瑠璃は相変わらず、腹を見せた豪快な格好で寝ている。
　このあいだの雷雨の夜が嘘のような穏やかさだった。こうしていると、まるであの夜が、遠い昔のことのようにさえ思えてくる。
　あれは、鬼だったのだろうか。
　遠い昔の出来事のようなのに、艶子の言葉が、耳の奥にいまもはっきり残っている。
　鬼姫。あんたが仲間を呼んだんでしょう――
「……また、嫌われてしまったわね」
　知らず自嘲の笑みがこぼれた。
わかっている。あれから十二年経つが、もはや自分はあの家にあって、恐れられ、疎まれるだけの存在でしかないのだ。これから先もずっと。
　そう。……それこそが、この身に受けた呪い。
　憶えている。こうして目を閉じるだけで、瞼の裏に、ありありと浮かんでくる――
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         <category>003三話</category>
         <pubDate>Thu, 21 Aug 2008 00:07:42 +0900</pubDate>
      </item>
            <item>
         <title>四話</title>
         <description>あれは、四歳の秋だった。
　自分の目で見る空は、遠かったけれどまだ広くて、世の中は明るく、日々は楽しかった。
　母がいて、乳母がいて、祖父母がいて、たくさんの笑顔に囲まれていた。
　父の姿を家でよく見るようになったのも、あのころからだったろうか。それまで父親というものは、日が暮れると現れるものだと思っていたが、これからは一緒に暮らすのだと、そう聞いた気がする。
　これで殿は、ずっとわたくしたちのところにいてくださるのよ――
　母が殿と呼んでいたのは、父のことだ。母は喜んでいた。いや、家の誰もが喜んでいた。
　ちょうどそのころ、頻繁に耳にしていた名があった。
　韓藍の女。
　いま思えば、それはただの呼び名だ。本当の名は知らない。とにかく女房たちが、その名を口にするたび声をひそめていたのが、子供心にも気になっていた。
韓藍は秋に咲く、鶏の頭のような赤い花のことだ。その花で、紙や布を染めることもできる。女房たちが秘密の話でもするように、韓藍の女の名前を言うことがあって、そんなときはいつも、母が韓藍で染めた紙を、難しい顔で眺めていたのを憶えている。
だが、あの女が、その韓藍の女だと知ったのは、後になってからのことだった。
　――あの日はいまにも雨が降りそうに曇っていて、いやに蒸し暑かった。
　自分は、簀子に出て葛葉と人形で遊んでいた。
　何故、誰も気づかなかったのだろう。
　いつのまにか、庭先に女が立っていた。
　長い髪はもう何日も櫛を通していないかのように乱れ、顔は青白く、げっそりとやつれ、着ている衣は色あせて、ところどころが擦り切れて――そして、二つか三つの幼な子を連れていた。
　子供の目にも、異様だと思った。……風体ではなく、その形相が。
　葛葉が悲鳴を上げて、奥に逃げ込んだ。それを聞いて出てきた淡路も、驚いて人を呼びに行った。
　自分は、一歩も動けずにいた。
　女の血走った眼が、瞬きもせず、自分を見ていた。
　目が逸らせなかった。恐ろしさに膝が震えて、立ち上がることもできない。
　女は色あせた小袿の裾を引きずりながら、まっすぐこちらに歩いてきた。奥から出てきた女房たちが、何か口々にわめいていたが、自分は女の目に捕らわれたまま、ただそこに座り込んでいた。
　――おまえが、あの女の娘か。
　女は、かすれた声でそう言った。あの女が誰のことか、とっさにはわからなかった。
　――殿は、いずこか。わたしが逢いに来たと言え。
　殿といえば、父のことしか知らなかった。しかし父は、まだ帰っていなかった。
　女はどんどん近づいてきて、階を上り始めた。
　背後で女房たちが、姫、姫と、自分を呼んでいた。呼んでいたが、どういうわけか、誰も助けにはきてくれない。皆、女の鬼気迫る様子に恐れをなしていたのだろう。
　――姫……か。
　女の頬が、引きつった。笑ったのかもしれない。
　――おまえは姫と呼ばれ、わたしの娘は捨てられるのか。
　あえぐようにそう叫び、女が手を伸ばした。
　枯れ木のような細い指が、自分の着ていた袙を掴んだ。女の表情が、痛みに耐えているかのように、苦しげに歪む。
　――許さない。……そんなことは、許さない。
　怖いのに、目を閉じることも、耳を塞ぐこともできない。
　袙を掴む手に、引きずり下ろされそうだった。
　誰か助けて――
　そう思ったとき、女が激しく咳き込んだ。真っ白な袙に、ぽつぽつと無数の赤黒い染みができる。背後の悲鳴が、ひときわ大きくなった。
　のろのろと顔を上げた女の、さっきまで紫色だった唇は、紅を塗りたくったように赤くなっていた。
　赤い唇が、言葉を紡ぐ。


わたしの娘を見捨て、不幸せにしたなら、許さない。
おまえ自身も、おまえに関わるすべてのものも、何もかもを滅ぼしてやる。


　その言葉は、まるで、遠い遠い天の上から聞こえてきたように、耳に響いた。
　意味はまったくわからなかったが、何か、とても恐ろしいことを言われたのだということは、よくわかった。
　ただ呆然としていると、女が再び咳き込んだ。袙がどんどん血に染まっていった。見ると、自分の両手の甲にも、赤いものが散っていた。
　……血が。
　そのときようやく誰かが駆けつけてきて、自分と女を引き剥がした。我に返って振り向くと、それは真っ青な顔をした乳母だった。
　女は階の中ほどまですべり落ち、そこでぐったりと動かなくなった。
　――かあさま。
　舌足らずな可愛らしい声がして、幼な子が倒れ伏した女のもとへ走り寄り、その背にすがりついた。
　気づいたのは、そのときだった。
　女の着古した小袿は――韓藍で染められていた。

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         <category>004四話</category>
         <pubDate>Tue, 26 Aug 2008 00:09:36 +0900</pubDate>
      </item>
            <item>
         <title>五話</title>
         <description>　詞子は、静かに目を開けた。
　韓藍の女。
　呪いの言葉を残して息絶えた――艶子の母。
　いまでは自分を産んでくれた母の面差しさえうまく思い出すことができないというのに、鬼気迫る韓藍の女の顔は、どんなに忘れたくても記憶から消し去ることができない。
　やつれ果てた、恐ろしい、それでいてひどく哀しい――
「……」
　あの呪いは自分に向けられたものだ。女の目は、間違いなく自分を見ていた。だから皆、自分を恐れた。呪いに関わることを恐れ、怯え、離れていった。……実の父親でさえも。
　いまとなっては、頼れるのは淡路と葛葉だけ。でも本当は、二人とも離れたほうがいいのだ。いつまでも自分に縛りつけておいてはいけないのに。
「ね、瑠璃。……わたくしは、誰とも関わらずに生きてゆくほうがいいのにね」
　くつろいでいた黒猫の尻尾が、小さく動いた。
「……そうなのよ。決して幸せにはなれないのなら、誰も巻き込まずに……」
　独り言ちた詞子に、瑠璃が潰れたような声でうめき、ごろりと転がって、不機嫌そうな金色の目で詞子を見上げてきた。
「あら、ごめんね。起こしてしまったわね」
そう言ったところで、別に起こされたから機嫌が悪そうなのではなく、この猫の目つきが悪いのは生まれつきである。二年前に艶子の飼い猫が八匹の子猫を産んだが、そのうち二匹は器量が悪いからと、艶子が詞子に押しつけてきた。せめて名前ぐらいは美しくしようと、瑠璃、玻璃と名付けたが、無愛想な顔は相変わらずだ。
　瑠璃が辺りを見まわしているので、詞子は御簾の隙間をそっと手で広げてやる。
「玻璃なら外よ。庭にいるんじゃないかしら」
　返事をするようにひと声鳴いて、瑠璃も外に出ていく。だが瑠璃は兄弟の姿を捜すのではなく、階を下りたあたりに腰を落ち着け、天を仰いだ。
　満開の、枝垂れ桜があった。
　淡い紅色に包まれた枝が、水底にたゆたう藻草のように、ゆらゆらと風に揺れている。
「……花は、変わらないわね」
　自分はあのころと、こんなにも変わってしまっているのに――
　瑠璃が振り返り、またひと声鳴いた。一緒に花見をしようと誘われているようでおかしくて、詞子はくすりと笑う。
「駄目よ瑠璃。わたくしは、もう軽々しく庭に出られる年じゃないのよ？」
　しかし瑠璃はなおも鳴いて、短い尻尾をしきりに振っている。
　花はまさに、いまが盛り。
「……」
　都の中ではない。……喧騒からは、遠い場所。
　周囲には人家らしいものもなかった。小さな寺や、僧侶が暮らしていると思われる庵が、幾つかあっただけ。
　詞子は、そっと立ち上がった。
　……ちょっとだけ。
　御簾の内からではなく、もっと近くで花が見たい。
　小袿の裾を持ち上げ、詞子は御簾を押した。
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         <category>005五話</category>
         <pubDate>Thu, 28 Aug 2008 00:00:02 +0900</pubDate>
      </item>
            <item>
         <title>六話</title>
         <description>「安芸守の姫君も駄目だったんですか？」
　容赦ないひと言に、雅遠は剣呑な顔で乳兄弟を振り向いた。
「まだ駄目と決まったわけじゃない」
「でもその御様子だと、限りなく駄目な方向に近づいてるわけですよね」
「……そんなことないっ。今度のは、そんなに悪い対応でもないんだ。が……」
　雅遠は文机に向き直り、しばらく料紙を睨んで唸っていたが、とうとう筆を投げ出した。
「あー、やめだやめだ！　なんっにも思いつかん!!」
「そこで投げたらますます駄目でしょう」
「思いつかないものはしょうがないだろ。おい、保名。おまえ夜までに一首詠んでおけ」
「私がですか!?　嫌ですよ！　そんな、雅遠様に差し上げられるような気の利いた歌があれば、自分で使ってます！」
「ったく……誰だ、恋をするには歌を詠めなんていう決まり事を作ったのは」
　ぶつぶつ文句を言いながら、雅遠は手早く硯箱を片付けてしまう。
「そんなに毎度苦心されるのでしたら、兵部卿宮にお願いしてはいかがです？　あの御方なら、恋歌を詠むくらい、爪を切るよりたやすいことでしょう」
「……もう頼んだ。だいぶ前に」
「そうだったんですか？」
「で、それを四、五人に使いまわした」
「……」
「そうしたら、どこからかその話が漏れてな。ますます笑い者になった」
　保名はさも頭が痛そうに、額を押さえた。
「雅遠様……。もう観念して、おとなしく御父上に結婚相手を決めていただいたほうがよろしいのではないですか」
「絶対嫌だ。父上の選んでくるのはな、どれも教養があって、歌集を全巻暗記するようなのばっかりなんだ。そんな女と一生付き合わなくちゃならないなんて、背筋が寒くなる」
　仮に結婚相手が自分の苦手な女だったら、世間並みに、他に恋人を作るなり時機を見て別れるなりしてしまえばいいだけのことだと思うが――と、保名は口には出さないまでも、首をひねる。少なくとも、左大臣の嫡子という地位があれば、そのくらいは不可能ではない。
もっとも、そういうことに考えが及ばないところも、どこまでも世の公達とずれている雅遠らしいのだが。
「……どこかにいるといいですねぇ、雅遠様にお似合いの、歌の嫌いな姫君が」
「おまえもせいぜい祈っててくれ」
　雅遠は、狩衣の裾を無造作にさばきながら腰を上げる。
「どちらに？」
「馬でひとまわりしてくる。こういうときは、走るのが一番だ」
「日が沈むまでにはお戻りになって、ちゃんと安芸守の家に行ってくださいよ。たとえ歌が詠めていなくても、続けて通わないと誠意がないと見られて、本当に駄目になってしまうんですから……」
「あー、わかってるわかってる」
　追ってくる乳兄弟の声に軽い返事をして、雅遠は背を向けたまま、ひらりと手を振った。
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         <category>006六話</category>
         <pubDate>Tue, 02 Sep 2008 00:00:07 +0900</pubDate>
      </item>
            <item>
         <title>七話（１）</title>
         <description>　わかってはいる、のだ。
　別に女が嫌いなわけではない。ちょっと垣間見て、悪くはなさそうだと思った女もいる。だが、世の中に倣って恋歌を贈ると、間違いなく笑われたり呆れられたりするので、そこでもう、気持ちが萎えてしまう。
　……どうせ俺は、恋に向いてないんだ。
　歌を詠むのが苦手だというのもあるが、そもそも世間の男どもが、話したこともない、それどころか会ったことも、ろくに顔を見たこともない女に、どうやったらあそこまで入れ込むことができるのか、そこが不思議でならないのだ。
　あそこの家の女は美しいらしいと噂が立てば、皆がその女の気を引こうと殺到する。つられて自分も見にいって、こっそり顔を拝むことに成功してみれば、どこにでもいるような女だった――ということも、何度かあった。そうなると、噂も当てにならない。
　……恋なんか、つまらん。
　馬の歩みが止まって、雅遠は我に返った。いつのまにか、鴨川沿いまできている。これからどこに行くのかというふうに、愛馬が首を大きく振った。
「ああ、ぼんやりしてた。悪かったな、玄武」
　玄武は雅遠自慢の、黒毛の駿馬だ。せっかく気晴らしをするために出てきたというのに、考え事など、もったいない。
「いい天気だ。――五条から川を渡って、山桜でも見に行くか」
　雅遠は気の向くまま、橋を渡り上流のほうへと愛馬を走らせた。この辺りは庶民の住まいや寺、貴族の別邸などが点在しているが、やはり街中よりは静かだった。
　風は少し冷たいが、陽射しはあたたかく、気持ちがいい。馬の足も軽く、山のほうまで行くうちに、また川が現れる。
　雅遠は手綱を引き、歩を緩めた。――白川だ。
　そういえば、白河には当分近づかないほうがいいと、誰かが言っていたが。
　……鬼姫、ねぇ。
　雅遠は馬上で、苦笑する。その姫君が本当に鬼を呼び寄せたというのなら、どうやって呼ぶのか、むしろ見てみたいものだ。
　どこからか飛んできた、小さな桜の花びらが一枚、雅遠の萌黄色の狩衣の袖に張りついた。近くで咲いているのだろうか。
　橋を探して川を渡り、道なりに進んでいると、ふいに白っぽいものが物陰から飛び出してきて、雅遠は慌てて馬を止めた。
　猫だ。白地に黒い模様があり、ふてぶてしい面構えで、行く手を遮るように道の真ん中に立っている。
「……何でこんなところに……」
　雅遠は馬から下りて、まじまじと白黒の猫を見た。猫は普通、屋内で、繋いで飼うものだ。外で見かける生き物ではない。どこからか逃げてきたのでなければ、こんなところで遭遇することなどあり得ないのだが。
　猫は面食らっている雅遠を見上げると、まるで一緒に来いと言っているかのように、先に立って歩き始めた。つられて雅遠は、馬を連れて後からついていく。
　周囲をよく見ると、道の先に朽ちかけた築地が続いていた。ちょっとした大きさの屋敷があるらしい。もしかしたらこの猫は、ここで飼われているのだろうか。だとすると、この屋敷には誰かが――
「あ」
　猫が築地の角を曲がり、その先にある門から中へ入っていった。
　門構えは悪くない。身分のある誰かの別荘だろうか。門前で逡巡していると、さっきの猫が、自分を待っているように立ち止まり、こちらを振り返っている。
「……」
　雅遠は築地の脇に生えていた立ち木に馬の手綱を結わえ、思いきって門の内に足を踏み入れた。――見渡す範囲には、誰もいない。
　少し寂れたふうだが、対の屋があり、車宿も中門もある。これなら四位以上の貴族の別荘と言ってもいいくらいかもしれない。しかし、そのくらいの身分の者が住んでいるなら、誰かが出てきてもよさそうだが。
　いーっ、と妙な声で、猫が鳴いた。雅遠を促すように、しきりに尻尾を振っている。
「おい。……まさか、おまえがこの家の主じゃないだろうな？」
　白河には猫の御殿があった――などと、話の種にしても面白いだろうか。雅遠は猫に誘われるまま、中門をくぐった。
「……」
　頭を上げた途端、視界が桜色に染まる。
　花。
　色鮮やかな、見事な枝振りの、大きな枝垂れ桜。
　地につくほどに伸びた枝は、花が咲いていなければ、柳と見まがうかもしれない。
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         <category>007七話</category>
         <pubDate>Thu, 04 Sep 2008 00:00:58 +0900</pubDate>
      </item>
            <item>
         <title>七話（２）</title>
         <description>　……桜の、雨だ。
　まるで花が、天から降り注ぐようだった。雅遠は二歩、三歩と枝垂れ桜に近づき、しばし呆然と桜を見上げていた。
　見上げていて――それで、しばらく気づかなかった。
　目の隅に映った、白と赤花の、桜襲の衣の色に。
「……」
　強い風が吹き、桜の幕を翻す。
　女がいた。
　目が合った。
　黒目勝ちな瞳が、どこかぼんやりと、こちらを見ていた。
　まさかこんな明るい日の下で若い女に出会うとも思わず、驚きのあまり、雅遠もとっさに動くことができなかった。
　ただ、桜の枝だけが、ふたりのあいだで揺れている。
　と――突然女がはっと目を瞬かせ、桜の花に似た小さな唇を開いた。
「あ……」
　たったひと言、それだけ発した女の白い頬が、さっと朱に染まる。
　女が踵を返して後ろ姿を見せたところで、雅遠も我に返った。
「あ、ちょっ、待っ――」
　思わず手を伸ばした雅遠の足元で、何かが低く唸る。見るとさっきの白黒とは違う、全身真っ黒の猫が、いまにも飛びかかってきそうな体勢で、こちらを見上げていた。
「な、何……あ、おい」
　途惑いながらも女の姿を目で追うと、女の長い髪と桜襲の裾が、御簾の中に消えようとしている。だが、黒猫の気迫に邪魔されて、一歩を踏み出すことができない。しかも門のほうから、玄武の鋭いいななきが聞こえた。
「……っ」
　舌打ちして、雅遠が門のほうへと駆け戻ると、玄武の顔の辺りを蜂が飛びまわっていた。それを嫌がって鳴いたらしい。愛馬をなだめて再び門を振り返ると、さっきの黒猫が、門前にどっかりと腰を据えている。
「何なんだ。俺を入れたいのか、入れたくないのか、どっちなんだ」
　思わずそう話しかけると、黒猫はふんと鼻を鳴らし、さっさと帰れとでもいうかのように、前足を二度振った。……可愛げがない猫だ。
雅遠は軽く息を吐き、首の後ろを掻いた。
ぶち猫に招待され、黒猫に追い出されてしまった。別に猫が怖いわけでもないので、もう一度中に入ろうと思えば入れないことはないが、どこの誰の屋敷かもわからないのに、二度踏み込むのもはばかられる。しかも、家の者と顔を合わせてしまった。
「……」
　年は十五、六くらいだったろうか。ちょっと見たところ、いい家の姫君のように見えたが、避暑の時季でもなし、こんなひなびたところに、どこぞの姫君がいるなんて、意外だ。
　そこまで考えて、雅遠は玄武の手綱を解こうとしていた手を止めた。
　いたはずだ。
　ここは、白河。
　従三位の上達部、二条中納言の別邸に、その大君が。
「……鬼姫……？」
　まさか。
　雅遠は築地越しに見える屋敷を振り仰いだ。風が吹き、周囲の木立がざわりと騒ぐ。
黒猫が門の前で、じっと挑むように、雅遠を見据えている。
「嘘だろ……」
　花見の宴で聞いた噂は、白河の鬼姫は特に美人でもない、それどころか何かに呪われていて、鬼が呼べるような恐ろしい姫君だというものだった。だが、ついさっき見た女は、色が白くて小さくて、やさしい顔立ちをしていた。鬼にはほど遠い。
　……誰なんだ？
　こんなとき敦時ならば、すぐに正体を尋ねる歌のひとつでも詠んで、置いていくだろう。しかし自分には、そんな気の利いたことはできない。上の句ひとつすら浮かばない。それなのに、このまま帰るのもすっきりしない。
　鬼か、人か。――あれが鬼なら、顔を合わせた自分も呪われるのか。
　……何に？
　そんな話は聞かなかった。ただ、皆が勝手に怯えていただけで。
そもそもあの小さな姫君が、鬼だの呪いだのに関わりがあるようにすら見えなかった。あれが本当に鬼姫なら、やっぱり噂なんか、当てにはならないということだ。
「……」
　雅遠は辺りを見まわし、築地に沿って点々と菫が咲いているのを見つけると、ひとつ摘み、それを持って黒猫の前にしゃがんだ。
「そんなに睨まなくても帰る。黙って入った詫びだ。さっきの姫君に渡してくれ」
　黒猫はまだ胡乱な目で雅遠を見ていたが、差し出された菫の花を器用に口にくわえて腰を上げる。
「相手を間違えるなよ。桜の下にいた姫君だぞ」
　余計なお世話だと言いたげに雅遠を一瞥し、黒猫はのっそりと門内に戻っていった。可愛げはないが、頭はいいのかもしれない。
「……帰るか、玄武」
　そういえば、日が沈むまでに戻れと保名に言われていたのだ。そろそろ帰らなくては。
　雅遠は何となくそこに心を残しながら、愛馬にまたがった。
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         <category>007七話</category>
         <pubDate>Tue, 09 Sep 2008 00:00:47 +0900</pubDate>
      </item>
            <item>
         <title>八話</title>
         <description>……何てこと……。
　御簾の中に駆け込んだ詞子は、廂に突っ伏して袖で顔を覆っていた。胸が痛いほど鳴っている。うまく息もできない。
　誰もいない、いるはずもないと油断して、外に出てしまった。ちょっと桜を眺めて、すぐに中に入るつもりが、間近に行くと、やはり御簾の内から見るよりはるかに美しく、つい、時を忘れた。
　油断した罰が当たったのだ。……見ず知らずの男に、はっきりと姿を見られてしまった。
　女がむやみに人前に顔をさらすのははしたないことだと、いくら世間から遠ざかって久しくとも、それくらいは承知している。ここが人里から離れていても、わざわざ廂を御簾で覆っているのは何のためか。
　……自分から出てしまったら、何の意味もないじゃないの。
　男も驚いただろう。ここが中納言藤原国友の別邸と知れたら、中納言の娘は何ともはしたない、とんだ恥知らずだと噂を立てられるに違いない。それが本邸の者たちの耳に入ったら、また嘲りの種になってしまう。
「どうしよう……」
　せめてあの男が、言いふらさずにいてくれることを祈るしかないが――
　傍らで独特の泣き声がして、顔を上げると、いったい何をそんなに落ち込んでいるのかといったふうに、玻璃が首を傾げてこちらを見ていた。
「だって……どうすればいいの」
　いまさらどうもできないのだが、どうにかしなくてはいけない気がして、訳もなく焦る。
　そういえば、あの男はどうしたのだろう。まだ庭にいるのだろうか。
　恐る恐る振り向いたが、御簾越しに見える範囲には、すでに誰の姿もなかった。かわりに瑠璃が簀子に上がってきて、小さな額で御簾の隙間をこじ開けようとしている。
「……瑠璃？」
　瑠璃が、何かを口にくわえていた。御簾を少し上げてやると、瑠璃は首を詞子のほうに伸ばし、くわえていたものを落とす。濃い紫の、何か。
　指先で拾い上げてみると、小さな菫の花だった。
　……あ、かわいい……。
　どこに咲いていたのだろう。
　持ってきた瑠璃は、花になど興味なさそうに、また腹を出して寝そべっている。
　瑠璃も玻璃も、外から花を拾ってきたことなどない。しおれてもいないこの花は、おそらく、たったいま摘まれたもの。
　……もしかして、さっきの……。
　鮮やかな桜の中で見た、萌黄の狩衣が、目に蘇る。
　まだ若かった。自分と同じくらいかもしれない。見上げるほど背が高くて、まっすぐこちらを見た目が印象深い、はっきりした顔立ちをしていた。
　……悪いひとには、見えなかったけど。
　小さな菫を眺めているうちに、次第に気持ちも落ち着いてくる。どんな意味があって、あの男が瑠璃に花を託したのかはわからないが、迂闊さを慰めてくれているような気がした。
　詞子は、ようやくほっと息をつく。
　このことは内緒にしておこう。淡路と葛葉に話したら、叱られてしまう。いまのうちに風に乱れた髪を直して、袿の裾についてしまった砂を払わなくてはならない。
　……その前に。
　詞子は部屋の中に戻り、硯箱の蓋を開け、中にそっと、菫の花を入れた。</description>
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         <category>008八話</category>
         <pubDate>Thu, 11 Sep 2008 00:00:58 +0900</pubDate>
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         <title>『桜嵐恋絵巻』ＷＥＢ連載をご愛読いただきありがとうございます。</title>
         <description><![CDATA[『桜嵐恋絵巻』ＷＥＢ連載をご愛読いただきありがとうございます。
　先週ＵＰしました「八話」をもって、連載を終了させていただきます。
　このＷＥＢ連載の続きは現在発売中の文庫版でお読みになれますので、そちらもあわせてお楽しみいただければ幸いです。（ルルル文庫編集部）

　なお、今までの連載分は、以下のリンクよりお読みいただけます。
（<a href="http://lu3.gagaga-lululu.jp/ouran/001/">一話</a>／<a href="http://lu3.gagaga-lululu.jp/ouran/002/">二話</a>／<a href="http://lu3.gagaga-lululu.jp/ouran/003/">三話</a>／<a href="http://lu3.gagaga-lululu.jp/ouran/004/">四話</a>／<a href="http://lu3.gagaga-lululu.jp/ouran/005/">五話</a>／<a href="http://lu3.gagaga-lululu.jp/ouran/006/">六話</a>／<a href="http://lu3.gagaga-lululu.jp/ouran/007/">七話</a>／<a href="http://lu3.gagaga-lululu.jp/ouran/008/">八話</a>）
]]></description>
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         <category>編集部からのお知らせ</category>
         <pubDate>Tue, 16 Sep 2008 00:00:58 +0900</pubDate>
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