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 昔むかし、あるところに、アジェンセンという、出来たばかりの小さな国がありました。
 その国には、ルシードという名の年若い快活な大公様と、メリルローズという、それはそれはお美しいお妃様がいらっしゃいました。
 お二人は政略結婚で結ばれましたが、とても仲むつまじく、戦ばかりしている大公殿下をお妃様がよく助け、アジェンセンの国はとみに栄えていったのです。

 しかし、そんなお二人には、だれにも言えない秘密がありました。

 なんと、そんな仲むつまじいお二人は、
 実は、
 正真正銘の”仮面夫婦”だったのです――!


 アジェンセン、という名の国がある。
 国土は、大陸のやや東よりの北方。草原と火山を有する豊かな北の地。元は、荒々しい騎馬民族がそれぞれの土地をめぐって争っていた無法地帯である。
 その地を一つにまとめ上げ、アジェンセンという国を作り上げたのが、ルシードの祖父こと、大王ジハード=ロンギオンであった。
 以来、五十年。
 大国パルメニアの庇護国として、アジェンセンはその歴史を刻んできた。
  そしていま、そのアジェンセンは、前大公であった実の父を打ち破り、十八歳の若さで、大公位を手にしたルシード=ミリ=アジェンセンによって、再統一されたばかりである。
 しかし、晴れて国を再統一したとはいえ、ルシードが心休まるときは少ない。
 なにせ、国主である大公は、忙しい。
 まだ年若いこの国には、一歩前へ進むにも、国主の決断を仰がねばならない懸案事項が山と立ちふさがっているのだ。
 毎日の政務に加え、反乱を繰り返す北方部族の鎮圧。そして、己が肥え太ることばかりを考えている貴族たちとの進まない議論と――、
 大公はまさに、休む暇もない。
そして、